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あさひのよろい
あさひの鎧
国枝 史郎
「時事新報」1934(昭和9)年8月25日~1935(昭和10)年3月16日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 239,520 字 · 475 页
野の宮の妖精
ほかでもない小次郎であった。
「チェ、もろく斬られたわい。……兄上なかなか手利きじゃなア」
こんなことを口の中で呟いて、死骸の側へ寄って行った。
「おや、こんなものが落ちている」
一個の巻軸を拾い上げた。
野の宮の妖精
これより少しく前のことであるが、栗栖野小野の一所に、木深い野の宮が立っていて、社殿の前の荒れた庭で、一人の老婆が焚火をしていた。
屋根は崩れ縁は腐ち、狐格子はなかば外れ、枯れ草落ち葉でその屋根も縁も、その本質の解らないまでに蔽われ埋ずめられ隠されていた。
焚火はトロトロと燃えていた。
焚火の上には巨大な土釜が、蜘蛛のような形にかかっていて、蓋の隙から湯気が立っていた。
それを見詰めながら切り株に腰かけ、その老婆はいるのであった。
いただいている髪は卯の花のように白く、火の光で銀色に光って見えた。
身長は七尺もあるであろうか、それだのに全身は痩せていて、細い枯れ木を連想させた。
そういう体へ着けているのは、巫女の着る白衣であり、そういう足に穿いているのは、一本歯の木履であった。そうして腰の辺りに差しているのは、四尺ほどの御幣であった。
この鷲のような鼻を持ち、鎌形の大きな口を持った、妖精のような老婆こそ、ほかならぬ鬼火の姥なのであった。