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あさひのよろい

あさひの鎧

国枝 史郎

「時事新報」1934(昭和9)年8月25日~1935(昭和10)年3月16日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 239,520 字 · 475 页

青空文庫

後苑の尊貴

後苑の尊貴

それは日野資朝であった。

いつの間に無礼講の席を遁がれて、このような所へ来たものか、白芙容の咲いているそれを横手に大地に跪座して謹ましく、そう言上しているのであった。

資朝の前に立たせられたは、まだ御年御十七歳ばかり、はなはだお若くはあらせられたが、ご身長抜群の御方で、白の練絹で御顔を包まれ、黒の道服を召されていた。ご微行なるがゆえであろう。高貴の御方だということは、神采奕々とでも形容しようか、その御方ただご一人が、そこに粛然と立たせられたばかりに、周囲の自然――花木緑葉が、清浄にすがすがしく感じられる、そのことだけでも頷かれた。

すこし引きさがって一人の武士が、御刀を捧げて立っていた。

村上彦四郎義光であった。

その背後にも数人の武士が、寂然と佇み警護していた。

「楠木兵衛尉正成なども、いざ事あがりましたる際におきましては、一族郎党をこぞりまして、金剛山の険によりお味方仕ると力強き誓言、播磨の赤松則村も、必ずお味方仕ると、いさぎよき誓約にござりまする。伊予にありましては土居、得能、勤王の兵を挙げますこと、火を睹るより明らかにござりまする」