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あさひのよろい

あさひの鎧

国枝 史郎

「時事新報」1934(昭和9)年8月25日~1935(昭和10)年3月16日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 239,520 字 · 475 页

青空文庫

聖雄と英雄

窺われる河内平野の、朝霧の景色をご覧になりながら、舎弟正季と恩地太郎とを連れた、楠木正成と顔を合わした。

「今日はどんな兵法を使って、二十万の大軍に泡を吹かせるか、これがわしには楽しみだよ」

何事にも率直の宮家であられた、こう仰せられて正成を見詰めた。

「宮様の御感に入ろうものと、正成苦心しおりまする。……が、兵法にかけましても、ご鍛錬の宮様の御感に入ること、なかなか困難にござりまして、正成大汗にござります」

誠忠、律義、木訥、恭謙、そういう性質の正成ではあったが、宮家とはことごとく気心が合い、水魚の交わりを呈していたので、何事も気安く云うことが出来た。

(大汗)などとさえ云うのであった。

「いずれお前のことであるから、あッというような奇手を使って、敵を狼狽させることであろうよ」

「すくなくも向こう四日間は、奇手妙手を用いまして、敵を一足も城内へは入れぬ。――というのが、方寸にござります」

「向こう四日間? ふうん、四日間? ……五日目にはどうなるのか?」

「正成討ち死ににござります」

「ナニ討ち死に? すこしお待ち」

宮家は切れ長の睫毛の濃い、涼しい御眼をパチパチとさせたが、