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あさひのよろい
あさひの鎧
国枝 史郎
「時事新報」1934(昭和9)年8月25日~1935(昭和10)年3月16日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 239,520 字 · 475 页
「ありゃア到着した六波羅勢じゃ! それがあの火にたぶらかされ、飛天夜叉組が落ちると観じ、追って行くわ、駈けて行くわ! ……こりゃたまらぬ、一大事じゃ! ……やアやア誰か退き鉦を打て! ……味方をここへ集めねばならぬ!」
声に応じて眷族の一人――鳶の七九郎という男が、用意してあった鉦を取るや、桴さばき荒く打ち鳴らした。
音は忽ち哈々と鳴り、大藪地の四方へ響き渡った。
が、どうだろう、その音に応じて、ここの陣地へ帰って来たものは、十四、五人に過ぎなかった。
その他の姥の眷族や、姥に味方して戦っていた、ここの大藪地の住人の、野武士や非人や盗賊の群れは、六波羅勢と同じように、移動する松明にたぶらかされ、飛天夜叉組落ちると観じ、追い討ちにかける気でその方角へ、いずれも馳せて行ったらしい。
「残念! ……一大事! ……無念! 南無三! ……飛天夜叉めにしてやられた!」
またも姥は地団太を踏み、狂うように躍り上がり躍り上がったが、
「向こうがそうならこっちはこうじゃ! ……火をともしたなら消すばかりよ! ……嵐を起こして、雨を降らして! ……姥の法力見よや見よや!」