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あさひのよろい
あさひの鎧
国枝 史郎
「時事新報」1934(昭和9)年8月25日~1935(昭和10)年3月16日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 239,520 字 · 475 页
密林の乱闘
と、範覚は呻くように云った。
「凄い! ……ウム……凄いのう!」
ジリリと一足後へ退った。
と、頼春は一足進んだ。
しかしわずかにそれだけであった。
依然として二人ながら静まっていた。
(何者だろう? この盲人? ……凄いのう、まるで剣鬼だ!)
ゾッとするような殺気を感じ、範覚はまたも一足さがった。
密林の乱闘
後年の武士が武勇を現わし、それを人に誇る時、
「身は頼兼に似たるかや?」
と、セリフのように云ったそうである。
土岐十郎頼兼の武勇は、それほどに勝れていたのである。
その頼兼の一族にあたる、土岐蔵人頼春の武勇――剣の技に至っては、頼兼に劣らないばかりでなく、たち勝っていたということである。
盲目の身ではあったけれど、心眼心耳には狂いがなかった。
対者の行動が歴々と、心眼に映じ心耳に聞こえた。
怨みある鬼火の姥の眷族、五人までを討って取り、姥のおり場所へ行こうとした時、また一人敵が現われて、いま立ち向かって来たのであった。
(今度の相手は腕の立つ、ずいぶん凄い奴らしい)
そう頼春には感じられた。
大刀を頭上にふり冠りながら、木の葉の落ちるのさえ感じられる、その霊妙の心耳を澄まし、相手の呼吸をうかがった。