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あさひのよろい

あさひの鎧

国枝 史郎

「時事新報」1934(昭和9)年8月25日~1935(昭和10)年3月16日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 239,520 字 · 475 页

青空文庫

が、一つだけ気にかかることがあった。

それは洞窟のある一所から、絶えず煙りが出ていることであった。

それも尋常の煙りではなく、墨のような色をした煙りであり腥ささを感じさせる煙りであった。

煙りがそこから吐かれて来るからには、何者か住んでいなければならない。

でも、女たちは恐ろしげもなく、その洞窟の住人どもを、かえって誘惑でもするかのように、陽気にハシャイで泳ぐのであった。

「怨めしきは判官殿、わたしを恋死にさせながら、あなた様にはノンキらしく、ほかに増花の女をつくり……口惜しい――ッ」

と幽霊女は云ったかと思うと、ピシャリ! と水を掬ってかけた。

と、飛沫がパ――ッと立ち、日に射られて一刹那、そこへ鮮かに虹をかけたが、水をかけられた鶏娘は、

「キャ――ッ」

と、大仰に悲鳴をあげ、頭からドボ――ンと飛び込んだ。

と、綺麗な二本の脚が、水面から空へピーンと延び、しばらく宙でただよったかと思うと、グーッと水の中へ引き込まれてしまった。

死んだかな? 心配はない! 三間ばかりの下流へ浮かんで、

「コケコッコー、水あびたーッ、トテコーヨー、こん畜生!」

ピシャッ! と水を刎ねとばした。