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あさひのよろい

あさひの鎧

国枝 史郎

「時事新報」1934(昭和9)年8月25日~1935(昭和10)年3月16日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 239,520 字 · 475 页

青空文庫

流浪の人々

そういう桂子の身の上だのに、どうして小次郎などを恋し出したのだろう?

これが浮藻には不思議なのであった。

黒髪から水を絞り絞り、浮藻は尚も歌いつづけた。

月がかくれて鳥啼めきやめば

船もかくれて櫂の音ばかり

行きし恋人帰り来ずに

来ませと呼ばう声のみ残り……

「コワイみたいなものだ」

と云いながら、周囲に集まっている仲間の者を、ニヤニヤ笑って見廻したのは、道楽のあげく悪疾を受けて、鼻と片眼とを失ったらしい、三十がらみの乞食であった。

「ウッフッフッ、悪かアねえ」

乞食と同じように木の間から、女たちの水浴を覗き見ていた、浪人くずれらしい男が云った。

流浪の人々

三人の女の水浴を見ながら、話し合っている人間は、男女とりまぜ八人であった。

世の廃人、社会の落伍者、いわゆる流浪の人々であった。

どこかしら彼らは不具であった。

片手ないもの片足ないもの、両耳を剃って落とされたもの、鼻や唇の欠けたもの。……

病気でそうなったものもあれば、刑罰によってそうされた者もあった。

その中に一人長方形の白布を、額からかけて頤の下までかけ、顔をかくしている若い女があった。

癩病患者ででもあるのであろうか?