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あさひのよろい

あさひの鎧

国枝 史郎

「時事新報」1934(昭和9)年8月25日~1935(昭和10)年3月16日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 239,520 字 · 475 页

青空文庫

(寂しいなあ)

とつくづく思った。

と、その時足音がして、

「兄上」

という声がうしろからした。

頼春は驚いて振り返った。

「なんだ、お前か、小次郎ではないか」

うしろに長閑そうに立っていたのは、頼春にとってはまた従兄弟にあたる、土岐小次郎の姿であった。

「はい、私でございます」

「なんと思ってこんな所へ……」

「供待ちにお待ちしておりましたが、お館の中があまりに賑やか、そこで羨ましく存じまして、後苑の中へまぎれ入り、今までこっそりご酒宴のご様子を……」

「不躾け千万、何んということだ」

「綺麗な白拍子がざっと二十人、素肌へ褊一枚を着て」

「馬鹿な奴だ、何を云うか」

「尹の大納言様が茶筌髷を散らし、指貫一つで道化た踊りを、たった今しがた踊りましたっけ……」

「アッハハ、とんだものを見たなあ」

「兄上お一人がお寂しそうに、取り澄ましておいでなさいましたが、水に油でございましたよ」

小次郎は頼春とはまた従兄弟なのであったが、きわめて親しい仲だったので、兄上兄上と呼んでいた。

そうして頼春と同じ館に、兄弟のようにして住んでいた。

身内であって主従関係――いわば居候の関係なのであった。