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あさひのよろい

あさひの鎧

国枝 史郎

「時事新報」1934(昭和9)年8月25日~1935(昭和10)年3月16日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 239,520 字 · 475 页

青空文庫

あらそう姉妹

「浮藻!」

と、桂子は憎さげに云った。

「そなた使命を果たしたかえ※(感嘆符疑問符、1-8-78)」

「使命※(感嘆符疑問符、1-8-78)」

と、浮藻は不思議そうに訊いた。

「お姉様、使命とは?」

「何んのために水浴に行くのだえ?」

「おいでとお姉様がおっしゃいますゆえ」

「で、使命を果たしたかえ?」

「…………」

「あの谷川の向こう岸に、何があるとお思いだ?」

「鬼火の姥の修法の洞が……」

「そうさ、修法の洞があるのさ、鬼火の姥の修法の洞が! そこには誰がいるのだろうね?」

「鬼火の姥や金地院範覚が……」

「そうとも金地院範覚がいるよ。姥にとっては無二の味方で、そうして情夫の範覚がねえ。……その範覚を迷わしたかえ?」

「…………」

「鬼火の姥が狂気じみた、男好きの女なら、金地院範覚は狂気じみた、女好きの男なのさ! ……その範覚を迷わしたかえ?」

「…………」

「あの二人が一緒に手を組んで、修法調伏を行なえばこそ、姥の調伏験を見せるのだよ」

「…………」

「姥の調伏を無為にしようと、こう思ったら姥の身辺から、範覚を放さなければならないのだよ……その範覚を迷わしたかえ?」

「それではお姉様は、そんなお心から……」