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あさひのよろい
あさひの鎧
国枝 史郎
「時事新報」1934(昭和9)年8月25日~1935(昭和10)年3月16日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 239,520 字 · 475 页
二撃!
「ヒーッ」
と悲鳴!
とたんに楓の叉からも、猩々卯ノ丸の悲鳴する声が、腸断つように聞こえて来た。
つづいて八方の木々の枝葉が、騒立ち群れ立ち軋り音をあげた。
卯ノ丸の眷族の猿猴たちが、王の真似をして騒ぎ出したのである。
逃げようともがく浮藻の裾を桂子は足で踏まえていた。
如意がまた高くかざされている。
「仏身より摩羅伽まで、三十三身に現じたまい、天人、人間、禽獣まで、解脱せしめたもう観世音菩薩の、観世音菩薩普門品を、血書きして今日で二十一日、写経は完成と思ったに、そのなかばにも達していない! 何故じゃ! そちがいるからよ! 色餓鬼の汝が側にいて、ソワソワ、ウカウカ邪魔するからじゃ! ……丑の刻が勝負の別れ目、この時刻までに写経終えねば、姥めに調伏されるであろう! ……立ち去れ、ここを! 行け、洞へ! 行って、範覚を迷わせろ! ……小次郎がおっつけここへ来る。お前がおってはわたしに邪魔! ……行け! 洞へ! 早う行け!」
三撃!
またも肩を打つ。
打たれて浮藻はうつ伏しに仆れ、爪で大地を引っ掻いたが、起き上がると腰を延ばし、桂子の腕へむしゃぶりついた。