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あさひのよろい

あさひの鎧

国枝 史郎

「時事新報」1934(昭和9)年8月25日~1935(昭和10)年3月16日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 239,520 字 · 475 页

青空文庫

そう! 女の肉体に!

「悪くはなかった」

と呟いた。

※悔の旅へ、浄罪の旅へ、出て来た頼春ではなかったか。

それだのにどうしてこのようなものに――殺人鬼などになったのであろう?

最初は決してそうではなかった。

神の界に属しまつる御一方より、許すとのお言葉承わるまでは、決して死ねない彼の行く手を、遮る者のあった時、彼は用捨なく殺したのであった。

が、そうして次から次と、人を殺しているうちに、「人を殺すというそのことだけに」興味を感ずるようになってしまった。

断末魔のもがき、末期の悲鳴、それが身心に感じられたとたん、鬱結していた血汐が下がり、圧迫されている心持ちが、一時に緩んで生き生きとなった。

この快味、この愉悦が、彼を殺人鬼にしたのであった。

それでいてもちろん心の奥では、神の界に属しまつる御一方にお逢いし、許すとのお言葉承わって、裏切り者の悶え心を、解放させたいと思っていた。

お許しを乾くように望みながら、実際においてはいよいよ許されぬ、悪虐の殺人を行なって、彼は旅をしていたのであった。

その間も彼は絶える暇なく「許すとのお言葉をくだされる、神の界に属しまつる御一方」