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あさひのよろい
あさひの鎧
国枝 史郎
「時事新報」1934(昭和9)年8月25日~1935(昭和10)年3月16日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 239,520 字 · 475 页
「解った!」
その声は銀のようであった。
「右衛門、お前の心持ちは、この小次郎にもわかっている! ……それは忠誠で、それは朴訥で、そうして一本気で、そうして純粋だ! ……みんなひどく立派なものだ! ……が一つだけ欠点がある、勝手すぎるということだ! ……美徳を沢山持っているのはいいが、その美徳を押し通して、他人に迷惑をかけるってこと、コレ少オし勝手すぎると思うよ。……それもいい加減のものならいいが、他人の命をとるというのだから、勝手さがちっとばかり大袈裟だよ。……そこで右衛門やわしは云うが、立派な心持ちはわかっているのだから、あんまり荒けなく出さないで、そっと何気なく仕舞っておいでとねえ」
何んと悠然とした態度であることか!
そうして何んとその云い方が、彼をそのように名玉に仕立てた、玉磨きの名匠桂子のそれと――その云い方と似ていることか!
小次郎は太刀さえ抜いていなかった。
「わっぱ! 二才! 何をおのれ――ッ」
嘲弄されたとでも感じたのであろう、右衛門は闘牛のような吼え声を上げ、また鉞をふりかぶると、業もなく思慮もなく、一文字に小次郎へ走りかかった。