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あさひのよろい
あさひの鎧
国枝 史郎
「時事新報」1934(昭和9)年8月25日~1935(昭和10)年3月16日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 239,520 字 · 475 页
(この子に乳を飲ませるより先に、あの娘さんに追いついて、小次郎様の素性を聞き、良人頼春のまた従兄弟にあたる、小次郎様であるようなら、その小次郎様に逢わせていただき、良人の居場所を知らせていただこう。……わたしが家を出旅に出て、このような身の上になったのも、良人に逢おうためなのだから)
で娘の後を追った。
猪小屋の見える辺まで来た。
するとさっきの娘らしい女が、小屋へはいって行く姿が見えた。
そこでここへ来たのであった。
早瀬は小屋を覗いて見た。
松明は明るく燃えていたが、娘の姿は見えなかった。
(どうしたのだろう?)
と不思議に思って、早瀬はしばらく佇んでいた。
隣り部屋から人の気勢がした。
(まあ隣り部屋にいるのだよ)
早瀬は小屋の中へ一足はいった。
と、男の嗄れた声で、
「この軟肌! 処女の肌!」
と、呻くがように聞こえて来た。
早瀬は小屋から走り出た。
(男の声だ! どうしたのだろう?)
何か恐ろしい出来事が、隣り部屋で行なわれているらしい。――そんなように感じられた。
早瀬は小屋の横手へ廻った。
山の斜面に口を開けて、窓が一つ開いていた。
そこからそっと部屋の中を覗いた。