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あさひのよろい

あさひの鎧

国枝 史郎

「時事新報」1934(昭和9)年8月25日~1935(昭和10)年3月16日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 239,520 字 · 475 页

青空文庫

(俺のような人間もあるものと見える)

小次郎はニヤリとした。

(褊一枚の女の体! こいつを見るのは悪くないからなあ)

しかしにわかに小次郎は、

(少し変だぞ)

と呟いた。

その男が顔を黒頭巾で包み、そうして黒の忍び衆の衣裳で、全身を包んでいるからであった。

(あんな扮装をした人間は、お供衆の中にはいなかった)

こう思ったからである。

なお見るとそこから十数間はなれた、満天星の木の蔭の暗い所にも、同じ姿をした二人の人間が、館の方を睨みながら潜んでいた。

見ると否々そればかりでなく、築山の裾にも土橋の袂にも、同じような人間が隠れていて、館の様子をうかがっていた。

(大変だあ――ッ)

と小次郎は思った。

(細作だ細作だ細作の群れだ! 細作の群れが何百人となく、お庭の中に入り込んでいる!)

何百人はないでしょう。

が、十数人はいるらしかった。

(細作だとすると、細作だとすると……六波羅方の細作に相違ない!)

大変だあ――ッといよいよ思った。

頼春は庭の奥の方へ歩いて行った。

と、数人の人影が見え、そこから話し声が聞こえて来た。

「楠木兵衛尉正成なども……」

そういう声がハッキリ聞こえた。