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あさひのよろい

あさひの鎧

国枝 史郎

「時事新報」1934(昭和9)年8月25日~1935(昭和10)年3月16日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 239,520 字 · 475 页

青空文庫

――が、疾風! そのとたんに、間道から人影が飛び込んで来た。

「小次郎様ア――ッ」

「浮藻殿オ――ッ」

「汝ア!」と姥が素早く認め、「その方は、おおおお、知っとる知っとる!」

姥は戒刀をダラリと下げ、眼を細くし首を延ばし、糸の切れたあやつりの傀儡のように、フラフラと前へ出た。

「一度は夜の京の町で、一度は司馬の大藪地で、見かけた美しいお侍さんだ! ……年たけていっそう綺麗になられた! ……執心じゃ、さわらせてくだされ! ……頬へ、額へ、可愛らしい口へ!」

「姥ア――ッ」

と嫉妬して範覚は吼えた。

「病気が出たか、荒淫無慚! ……やあやあ汝ら出て来い出て来い! ……この男を贄釜へ叩っ込め!」

莚をかかげて隣り部屋から、姥の眷族たちがこみ入って来た。

混乱!

悲鳴!

燈明が消えた!

「小次郎様ア――ッ」

「浮藻殿こっちへ!」

「やらねえ――ッ」

杖!

刀光!

音!

「手へ、胸へ、円々とした肩へ! ……さわらせてくだされ、執心じゃ!」

「ワッ」

小次郎に誰か斬られた。

「強いぞ!」

「用心!」

「凄い技術だ!」

「オレ、もう一度、オレもう一度! ……キ、気絶、気絶してえ――ッ」

「ギャッ」