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あさひのよろい
あさひの鎧
国枝 史郎
「時事新報」1934(昭和9)年8月25日~1935(昭和10)年3月16日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 239,520 字 · 475 页
「フーン」
と陸奥守は鼻を鳴らした。
「男と一緒に忍び込んだのか。……ではその男女もちと怪しいな」
「庭へ引き出し吟味したらどうじゃな」
と、三河入道が口を出した。
「さようさ、それも面白かろう。……権守、そやつらを引き出すようなされ」
間もなく叱咤する声などが、幔幕の背後から聞こえて来、やがて篝火で昼のように明るい、中庭へ四五人の武士に囲まれ、二人の男女が入って来た。
土岐小次郎と浮藻であった。
座中にわかに動揺した。
「なるほどこれは美しい」
「やつれてはおるが素晴らしい美女じゃ」
「売女と異って素人女は、まことに清らかでよいものじゃ」
女たちは女たちで囁き合った。
「よい殿ごぶり」
「光源氏じゃ」
鬼火の姥と範覚とは、小次郎と浮藻とを眼に入れるや、いかにも仰天したように、顔を見合わせ囁き合った。
そうだろう。姥は小次郎の美貌に、修験の道心を失って、叡山裏山の洞窟内での、調伏を仕損じたほどであり、範覚に至っては浮藻のために、気絶して仆れたほどなのだから、
「範覚よ、ありゃア小次郎じゃ」
「姥よ、浮藻じゃ、ありゃア浮藻じゃ!」
この時、陸奥守は座を立って、ツカツカと縁まで歩いて行った。