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あさひのよろい
あさひの鎧
国枝 史郎
「時事新報」1934(昭和9)年8月25日~1935(昭和10)年3月16日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 239,520 字 · 475 页
殺すものなら殺すであろうし、生かすものなら生かすであろう、追従も軽薄も云う必要はない)
この心持ちが彼をして、素ッ気なくぶっきらぼうにするのであった。
陸奥守は舌うちしながら、元の座へもどって来たが、
「敵方の細作であろうもしれぬ、しばらく監禁いたして置け」
と云った。
小次郎と浮藻とが武士たちに連れられ、立ち去っての後、また座敷は、好色陣と一変した。
厩舎の横に納屋があって、その方へ忍んで行く女があった。
酒席にいた娼婦の一人であった。
館の中での乱痴気さわぎも、ここらあたりへまでは聞こえて来ず、厩舎で馬が地を蹴る音や、非常を警める巡視の卒の、撃柝の音ばかりが聞こえて来た。
娼婦は納屋の戸の前に立ち、あたりを見廻してから幽かに叩き、
「小次郎様、小次郎様」
と呼んだ。
浮藻と引き放されただ一人で、納屋にこめられていた小次郎は、闇の中に坐って冥想していたが、
「どなたでござるな?」
とそっと訊いた。
「妾でござります。幽霊女で。……小次郎様ご心配なされますな、桂子様におかれましても、変装なされてこの館の中に、おいであそばすのでございますから。……すぐにお助けいたしましょう。