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あさひのよろい
あさひの鎧
国枝 史郎
「時事新報」1934(昭和9)年8月25日~1935(昭和10)年3月16日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 239,520 字 · 475 页
ノビて、気絶して、巨大な入道は、そのまま動かなくなってしまった。
範覚はヒョイとうすら笑った。
(もろいなア)
とでも云ったようである。
それから範覚は屏風から出て、地袋の戸を引きあけた。
範覚のやった所業なのであろう、両手両膝をしばられて、猿轡までかまされた浮藻の姿が、痛々しくその奥に横仆わっていた。
そういう浮藻を小脇に抱えた、範覚の姿が風のような早さで、別殿から庭へ躍り出したのは、それから間もなくのことであった。
「曲者オ――ッ」
警護の軍卒が二人、素早く目付けて遮った。
「わッ」
「キャッ」
金剛杖の二薙ぎ!
風のような早さで走って行く!
が、警護の武士たちは、至るところの庭にいた。
「曲者オ――ッ」
「ソレ捕えろ!」
別殿が怪しいと思ったのであろう、数人がそれへ馳け込んだ。
「一大事、御大将が!」
「陸奥守様が! 陸奥守様が!」
柝が烈しく打ち鳴らされ、松明が八方へ飛び廻り、注進が四方へ伝えられた。
「夜討ちだ!」
「寝首掻きだ!」
「飛天夜叉かもしれぬぞ!」
館は混乱の場となり、歓楽の陣営が修羅の場と化してしまった。
この時、庭の小暗い所で、娼婦に姿をやつしていた、幽霊女と鶏娘とが、ひそひそ話を交わせていた。