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あさひのよろい

あさひの鎧

国枝 史郎

「時事新報」1934(昭和9)年8月25日~1935(昭和10)年3月16日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 239,520 字 · 475 页

青空文庫

……でも、いずれはあなた様には、ご修行にお立ちなのでござりましょうねえ」

細くはあるが切れの長い眼、小さすぎるほど小さい唇、呉服は京あたりの顕紳の姫とは、おのずから異った地方豪族の息女の、質朴の美しさを備えていた。

「さよう、参らねばなりませぬ」

「そのように、お若いお身の上で、荒いご修行などなさいまして……何んのお役に立つのでございましょう」

「仏の道は救いの道、自分を救い人を救う、その助けになるでございましょうよ」

若い先達は、いや宮家は、ふと昔のことを思い出された。

日野資朝卿の別館で、無礼講の催しのあった時、微行して庭まで行き、資朝と逢って話したことで、

「還俗して戦場に立ちたいものじゃ」

こう、その時云った筈である。

(それがとうとう現実となった。還俗し、甲胄をつけ、合戦の場に立つようになった)

「先達様」

と、呉服は云った。

熱を持った声であった。

「…………」

若い先達は、ただ見詰めた。

「呉服を何んとおぼしめしまして?」

「…………」

「可憐と……可憐と……おぼしめしましてか?」

懇願するような声であった。

若い先達は頷いて見せた。

呉服の口から溜息が洩れ、涙ぐんでいる眼の中に、喜悦と安心との光がさした。