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あさひのよろい
あさひの鎧
国枝 史郎
「時事新報」1934(昭和9)年8月25日~1935(昭和10)年3月16日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 239,520 字 · 475 页
「なるほどのう」
と、定遍は云った。
「悪くない手じゃ、やってみようか‥…立て札へ書く文面が、そうなると大切なことになる」
「御意で」
と姥が口を合わせた。
「出来るだけ読む人の心持ちを、まどわすような文面を……」
「ひとつとっくりと考えてみよう」
定遍は眼をとじて考え込んだ。
密談に相違なかったので、襖はことごとく開けはなされていた。午後の中庭が見えていた。
泉水の岸、築山の裾に、盛りを過ごした桜の花が、それでも枝に群れていて、ひっきりなしに散っていた、老鴬の声もしきりに聞こえた。
四人はしばらく黙っていた。
それにしても姥や範覚は、どうしてこんなところへ来たのであろう?
漢権守の居城から、あんな事件で走り出し、飛天夜叉桂子の一団を討つべく後を追ったけれど、見失って討つことが出来なかった。
間もなく赤坂の城が落ち、大塔宮様や楠木正成が、自害をして果ててしまった。
が、慧眼の鬼火の姥には、詭計に思われてならなかった。
はたしてその後聞こえて来たのは、大塔宮様一行が山伏姿に身をやつされ、熊野から十津川方面へご潜行あそばされたということであった。
武家方である鬼火の姥は、そこでこのように考えた。