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あさひのよろい
あさひの鎧
国枝 史郎
「時事新報」1934(昭和9)年8月25日~1935(昭和10)年3月16日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 239,520 字 · 475 页
「誰かこいつを読んでくれ」
「お前読みな、遠慮はいらねえ」
「おれ読めぬ、鳥眼でな」
「朝見えない鳥眼なんて、おおよそ世間にあるものでねえ」
すると一人の山伏が、声高く立て札を読み出した。
「――大塔宮ヲ討チ奉リタラン者ニハ、非職凡下ヲイワズ、伊勢ノ車ノ庄ヲ恩賞ニ充テ行ナワル可キ由、関東ノ御教書有之、ソノ上ニ定遍先ズ三日ガ中ニ六千貫ヲ与ウベシ、御内伺候ノ人、御手ノ人ヲ討チタラン者ニハ五百貫、降人ニ出デタラン輩ニハ三百貫、イズレモ其日ノ中ニ必ズ沙汰シ与ウベシ。――とこう立て札には記してあるのじゃ」
すると群集は喚き出した。
「宮様を討てとは何事だ」
「熊野の定遍の悪巧みだな!」
「こんなものに何んでまどわされるものか!」
「こんな立て札ひき抜いてしまえ!」
「待て待て」
と山伏があわただしく止めた。
「まてまて、とはいえ、悪くないのう、非職凡下というからには、失業している平民どもじゃ、それが宮様さえ討ちとったら、一庄の主になれるのじゃ! 六千貫貰えるのじゃ! ……乞食が大名になれるというものじゃ! ……悪くないのう、悪くないのう!」
「黙れ、こやつ、とんでもない奴だ!」