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あさひのよろい
あさひの鎧
国枝 史郎
「時事新報」1934(昭和9)年8月25日~1935(昭和10)年3月16日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 239,520 字 · 475 页
と、喚きながら、左源太も飛び上がった。
「わッ」
これも同じように悲鳴し、地に仆れて動かなくなった。
咽喉から血を吹き出している。
嬰児の泣き声がまたきこえ、藁鳰が幽かに動きをなした。
と、女の声が聞こえた。
「また人二人をあなた様には、お殺しなされましてござりますねえ」
「…………」
「でも今殺された二人の男は、殺されてもよい者どもでした」
「…………」
「それにしてもあなた様の殺生さは。……わたしは悲しゅうござります」
つづいて泣き声が聞こえて来た。
「早瀬!」
という男の声がした。
「大塔宮様、この附近の樵夫小屋におわすこと確かとなったぞ。……こやつら二人が申しおった。……わしの手を引き十津川からここまで、息せき案内をしてくれた早瀬! ……頼む、急いでその小屋まで、わしの手を引き案内してくれ! ……嬉しや、いよいよこの年月の念願、相叶う期参ったぞ! ……頼春、今夜より真人間になれるわ!」
盲目で片腕の頼春が、顔に白布の垂れをかけ、胸に嬰児を抱えた早瀬に、左の腕の袖を握られ、大弥太と左源太との死骸を分け、露ふかい晩春の草を踏み、朧ろの月光に照されながら、血のついている竹の杖で、行く手の地面をさぐりさぐり、藁鳰の蔭から現われた。