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あさひのよろい

あさひの鎧

国枝 史郎

「時事新報」1934(昭和9)年8月25日~1935(昭和10)年3月16日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 239,520 字 · 475 页

青空文庫

右衛門はここで小次郎の方を睨んだ。

「が、わたくしといたしましては、そんなものよりそこにいる男を……」

「右衛門や」

と桂子は云った。

訓すような声であった。

「年を取っても、艱難を経ても、お前の短気と一本気とは、すこしも治らないと見えるねえ」

「性でございます、私の性で」

「小次郎をご覧、浮藻をご覧、年を取ったり艱難を経たら――漢権守の城などで、あんな恐ろしい目に逢わされたら、ああも性質が変わったではないか」

「よい変わりようではございません」

「遠慮深くなり控え目になり、他人の心持ちを推量して、決して我など張ろうとしない、人間らしい人間になったよ」

「無邪気で、あけっぱなしでよく笑った、陽気な性質が陰気になり、いつも何かを不安がっておられる、そういう性質になられました」

「人間らしい人間になったのさ」

「それが人間らしい人間なら、人間らしい人間というもの、厭アな物でございますなア」

右衛門はここで桂子を見詰めた。

「お姫様、あなたも変わられました」

「そうかねえ、どう変わったかしら?」

「人間らしい人間になりました、女らしい女になりました」

「…………」

「以前のお姫様ときたひには、男やら女やら、人間やら魔物やら、悪魔やら神様やらわけわからずにおりながら、大きな強い神聖な、不思議なお力で、わたしたちを心服させておられました。