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あさひのよろい
あさひの鎧
国枝 史郎
「時事新報」1934(昭和9)年8月25日~1935(昭和10)年3月16日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 239,520 字 · 475 页
「そうなくてはなりませぬ。……北条家代々のご仁政によって、この日本の武士という武士は、安泰にくらすこと出来ました筈で。……ご恩は海山でござりまする」
「いざ事あらば鎌倉へとな、われら日頃から思っていたのじゃ。……範覚殿もそうであろうな」
「さようで」
と範覚は吃驚したように云った。
というのは別のことを考えていたからで。
(姥とのツキアイにも飽き飽きした。年寄りで醜婦で惨忍で、そうして綺麗な男さえ見れば、ベタベタして後ばかり追っかける、好色で度のない浮気者でもある。こんな婆さんと何んの因果で、ツキアッて行かなければならないのだろう?)
こんなことを考えていたところへ、突然荘司に話しかけられたのであった。
「さようで、私も、いざ鎌倉となれば、代々仏法にご帰依なされ、執権の身で入道となられた、北条殿のおために、二つない命を捧げまするつもりで」
(が、本当はそうでないて)
心では考えているのであった。
(飛天夜叉の妹の浮藻とかいった女! ああいう女のためにこそ、俺は命を捧げるんだがなア。……その証拠には一度気絶したっけ)
「それにいたしても宮家一行、そろそろ参ってもよい頃だが」