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あさひのよろい
あさひの鎧
国枝 史郎
「時事新報」1934(昭和9)年8月25日~1935(昭和10)年3月16日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 239,520 字 · 475 页
と、玉置の荘司はいぶかしそうに云った。
「他の道などへ廻りましたのでは? ……」
と、鬼火の姥は不安そうに云った。
「いやいやどの道へ廻ろうと、われらが手の者要所要所にいて、警戒おこたりないにより、討ちもらすことはめったにないて」
「戸野の大弥太殿が竹原館で、惜しいところを討ちもらし、芋ヶ瀬の荘司殿が心弱く、お通しをしてしまった以上、ここで玉置殿が討ちとらずば、宮家は吉野へ入らせられましょう」
鬼火の姥と範覚とは、定遍の附けた討手と共に、そうして戸野の大弥太と共に、十津川へ入り込んで来たのであった。
が、わずかな時間の相違で、大塔宮ご一行は、竹原館をお出ましになり、吉野へご潜行あそばされた。
そこで姥と範覚とは、大弥太には関係なく先廻りをし、わけても武家方に心を寄せている武士、玉置の荘司のもとへ来て、宮家の御首級いただくよう、荘司に慫慂しているのであった。
広大な中庭には池があり、池には島がつくられてあり、橋が左右からかけられてあった。
奇巌で蔽われた築山からは、滝が幅ひろく落ちていて、滝壺の岩の上には鷺などがいた。
そういう贅沢の庭を見ながら、しばらく三人は黙っていた。