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あさひのよろい

あさひの鎧

国枝 史郎

「時事新報」1934(昭和9)年8月25日~1935(昭和10)年3月16日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 239,520 字 · 475 页

青空文庫

、その後吉野へ城を構えられ、そこへお籠りあそばされ、三千の武士や衆徒に守護され、諸方へご令旨を遣わされ、勤王の兵を募られつつ、一方には直ちに京都六波羅を、ご討伐あそばさるるご計画と、こういう形勢になってしまった。

そこで姥は範覚と連れ立ち、六波羅探題へ帰って来、北の探題の館に住み、今後の命を待つことにした。

ところが金地院範覚であるが、玉置の荘にいた頃から、姥に対して冷淡になり、離れようとする素振りを現わしたが、この館へ来て以来、その傾向が著しくなった。

それに薄々感付いてはいたが、まさかと思って鬼火の姥は、警戒しようとするでもなく、例によってこの館に仕えているところの、美貌の若武士や稚児や茶童に、いやらしい様子で働きかけた。

と、不意に今夜になって、範覚が姿をくらましてしまった。

異性に接することによって、飛天夜叉の桂子は、超自然力を失うのであったが、鬼火の姥に至っては、それとは全然反対に、異性に接しないことによって、超自然力を失うのであった。

年寄りで醜悪の姥に対しては、範覚以外のどのような男も、怖毛を揮って近寄らなかった。

もし範覚を失おうものなら、姥はただのお婆さんとなり、超自然力を失うであろう。