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あさひのよろい
あさひの鎧
国枝 史郎
「時事新報」1934(昭和9)年8月25日~1935(昭和10)年3月16日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 239,520 字 · 475 页
「や、ここに死骸があるわ!」
「腹切っているわ!」
「首がないわ!」
「物の具を剥げ!」
「太刀を取れ!」
義隆の死骸へ集まった。
「わッ」
と一人の武士が叫び、朱に染まってぶっ仆れた。
その武士の太刀を奪い取り、その武士の首を刎ね落とした、盲目の不具の乞食の姿が、武士たちの持って来た松明に照らされ、幽鬼のように立っているのが見えた。
「こやつ!」
「何者!」
「斬れ!」
「討ちとれ!」
ムラムラと頼春をおっとり囲んだ。
「大塔宮様の無二の忠臣、義隆殿の死骸を剥ぐ奴、許さぬぞ、一人も許さぬ!」
二、三人バタバタと斬り仆された。
「宮方じゃな!」
「遁がすな漏らすな!」
大勢! 乱刃! 悲鳴! 叫喚!
「もうよい、行け!」
武士たちは去った。
「死なぬぞ! おのれ! 何んで死のう!」
のたうち廻る頼春の体には、今まであった右の手と、右の足とがなくなっていた。
こんな際にも人里へ出て、食を求めて帰って来たらしい、早瀬のうたう子守唄の声が、木立ちの間から聞こえて来た。
泣きそ、な泣きそ
和子よ和子よ
「大塔宮様の御目にかかり、許すとのお言葉うけたまわるまでは、死なぬぞ死なぬぞ! 死なぬぞ死なぬぞ!」