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あさひのよろい
あさひの鎧
国枝 史郎
「時事新報」1934(昭和9)年8月25日~1935(昭和10)年3月16日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 239,520 字 · 475 页
木立ち、藪、石燈籠、それらのものも朦朧としていた。
藪の裾まで来た時である。義博は御首級を空にかかげ、その御面を凝視した。
口を結び、眼を見開き、逆賊の行為を怒られるがように、義博の顔をひたと見詰め、御首級は生き身さながらであり、今にも叱咤の御声が、迸り出るかに拝された。
義博は顫え上がった。
恐怖は慚愧と罰への不安とで、彼は身の縮む思いがした。
眼を閉じ佇み思案したが、やがて藪の裾へかがみこむと、御首級をそっと草の上に安置し、後も振り返らず走り去った。
で、その後はひっそりとなり、梢から露の藪へ落ちる音が、あるかなしかに聞こえるばかりであった。
その時人の足音が聞こえ、走って来る女の姿が見えた。木立ちをくぐり藪の裾を巡り、宮家の御首級の御前まで来た。
「あ」
と、微かに声を上げ、女はその御前にひざまずき、両の袖で御首級を捧げ持った。
土牢から駈け出して来た南の方であった。
嗚咽の声が糸のように、長く細く洩れて続いた。
土牢の中で行なわれた大逆の光景が、南の方の脳裡に、この時一瞬間ひらめいた。
義博の太刀を奪おうと、奮然と宮家にはおかかり遊ばされたが! ……土牢ご幽居でお力の脱けた御体! 義博の太刀先を御前歯をもって、グッとお噛み止め遊ばされたが! ……そのため太刀先が折れて砕けたが! ……差し添えを抜い