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あさひのよろい

あさひの鎧

国枝 史郎

「時事新報」1934(昭和9)年8月25日~1935(昭和10)年3月16日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 239,520 字 · 475 页

青空文庫

女仙

白衣をつけた桂子と、猩々卯ノ丸の姿であった。

「まあこれは連判状だね。わたしに必要があるかと思って、どこからかお前持って来たのね。志は有難うよ。そうねえ、これがもっと前にあったら、いくらか役にはたったろうが、北条氏が滅び幕府がつぶれ、政権が朝廷へお帰りになった今は、不用のものになってしまったのだよ」

こう卯ノ丸に云いながら、今日その卯ノ丸が不意にここへ来て、桂子へ捧げた連判状を膝の上で繰りひろげた。

「正中の頃に日野資朝卿が、山伏姿に身をやつされ、諸国を巡って豪族を説いて、宮方へ加担を慫慂し、連判状をつくったと噂に聞いたが、その連判状がこれなんだね」

(でも)

と桂子はしみじみと思った。

(宮方へご加担した人々のうち、誰が最後まで宮方として、忠義の誠心を尽くすやら?)

足利尊氏兄弟が、異心の鋒鋩をあらわしたことや、一般の武士たちが宮方に対し、何んとなく不平を抱いている様子が、よく桂子には感じられたので、不安に思われてならないのであった。

(反覆常ない人の心! 栄枯盛衰する浮世の相! 人界ってもの厭だ厭だ!)

猩々卯ノ丸は谷の方を、ただ黙然と眺めていた。

「さて」