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あさひのよろい

あさひの鎧

国枝 史郎

「時事新報」1934(昭和9)年8月25日~1935(昭和10)年3月16日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 239,520 字 · 475 页

青空文庫

土岐蔵人頼春がいた。

放心状態でありながら、押され、引かれ、揉まれ、突かれて、ここまで走って来たのであった。

それへ国長の瞳が向いた。

「おお!」

と彼は怪訝そうに云った。

「ああ!」

と続いて驚いたように云った。

「おのれは頼春! ……そちが、頼春が! ……六波羅方にいようとは! ……おおおおさてはおのれが裏切り! ……おのれが裏切りいたしたな!」

国長は叫ぶと床几からはなれ、大勢の敵のいるものも忘れ、ツカツカと中門から外へでた。

「われらが宮方へ加担のこと、いかがあって敵に知られ、今暁討手下ったかと、心にいぶかしく思っていたが、これでわかった、汝の裏切り! おのれの裏切りによって知れたのじゃな! ……何んといおうぞ、大虐極悪! ……天も許さぬ地も許さぬ! ……ヨ、頼春ウーッ! おのれがおのれが!」

国長の声は血を吐くようであった。

「おのれの裏切り、おのれの返り忠、尋常一様のものではないぞ! ……日本は神国そのご皇統は、一筋にして御神より出ている! ……われらが今回の企てこそは、この大本に帰さんとして、なかごろ大本をあやまったるところの、越権専横の武臣北条を、ほろぼすところに関っておるのじゃ! さればこのたびの汝の所業は、神の界への裏切りじゃぞ! ……許さるる期あるまいぞよ! ……日夜念々神の怒り、おのれの