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オリンポスのかじつ

オリンポスの果実

田中 英光

「文学界」1940(昭和15)年9月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 75,277 字 · 147 页

青空文庫

日頃、太ッ腹な氏としては、珍しく、話すのも汚らわしいといった激越ぶりでした。ぼくにしてみれば、話の最中ふりかえって此方をみる、クルウの先輩達もいるし、それでなくとも、氏の一言一句が、ただ、ぼくに向っての叱声に聞え、かあッと、あがってしまうのでした。氏は語をついで、

「だいたい、この前のアムステルダム行の時は、このことを怖れ、男子船と女子船とを別々に立たせたものだ、今回も前に比べれば、人数も増えているし、万一のことがあってはと心配して『男女七歳にして席を同じうせず』式の議論から、別々に立たせるのを主張する人もあったが、ぼくは、『厳粛なる自由』を称え、笑って、その議論を一蹴した。諸君、もう一度、君達の胸のバッジをみたまえ。光輝ある日の丸の下に、書かれた Japanese Delegation の文字は、伊達では、ねエんだろ。俺は今朝、ある忌わしい場面を、この船の事務員が見たとか、いう話をきいたときは、初めは話のほうが信用できなかった。否、今でも、そんな話は信用しとらん。

しかし、こういっただけで、若し、その事実ありとしても、その当人達は、充分、自戒してくれると思う。