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オリンポスのかじつ
オリンポスの果実
田中 英光
「文学界」1940(昭和15)年9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 75,277 字 · 147 页
二十五
ぼくは、びっくり敗亡、飛ぶようにして自分の船室に逃げ帰りましたが、内田さんの小首を傾げた横坐りの姿は、可愛い猫のような魅力と媚態に溢れていて、ながく心に残りました。
しかし、それから間もなく、KOのボオトの連中が坊主になるような事件を惹き起したとき、ぼくは、なにか危なかったと胸をなでる気持がありました。
事件といっても、大したことではなく、村川から聞いた処によると、皆が酔っぱらってブリッジにいると、中村さんを始め女のひと達が二三人あがって来た。それをこちらが不良学生みたいに取囲んで、酔った勢いで、ワアワア言っていると、中村さんが、真っ先に泣きだし、それを折悪しく来かかったTコオチャアに見つけられ、みんなはその場で叱責されたばかりでなく、Tさんは主将の八郎さんに告げたので、八郎さんがまたみんなを呼びつけて烈火のように怒り、自分から先に髪を刈って坊主になったので、皆もいさぎよく揃って丸坊主になり、謹慎の意を表したとのことでした。
二十五
横浜まで、あと一週間という日になった。
プロムナアド・デッキの手摺に凭りかかって海に唾を吐いていると、うしろから肩を叩かれ、振返ると丸坊主になりたての柴山でした。