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オリンポスのかじつ
オリンポスの果実
田中 英光
「文学界」1940(昭和15)年9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 75,277 字 · 147 页
二十二
海を眺めに行ったのです。あとに残ったあなたの淋しい表情が、形容のつかぬ残酷さで黙殺できると同時に、あなたの、やるせなさそうな表情は心に残った。ぼくは自分を勝手だとおもいました。膨れあがった海をみながら――。
二十二
とかく帰りの旅は気もゆるみ易く、且つ練習がないので、みんなは酒を飲んだり、麻雀をしたりした無為の日々を送っていましたが、どうも一種、頽廃の気風がなにか船中に漂いだした感じがしてなりませんでした。
ハワイに入る前夜、園遊会が盛大に開かれ、会長のK博士夫妻もインデアンの羽根飾り帽を冠って出場する和やかさでした。
ぼくは借り物競争に出て、算盤と女の帽子と草の葉を一枚、集めてくるのにあたり、はじめに近くに見物していた内田さんの頭から、ものもいわずに、紅いベレエ帽をひったくり、ポケットにねじこむと、ドタドタと階段をおっこちて、事務所に殺到、事務員のひとが、呆気にとられているか、笑っているのか見極めもできぬ素早さで算盤をひったくり、次いで、階段を、大股に、三段位ずつ飛びあがって、頂辺のガアデン・ルウムに入ろうとすると、ぴったり足がとまりました。緑滴たる芭蕉の葉かげに、若い男女が二人、相擁しあって、愛を囁いているのです。