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オリンポスのかじつ
オリンポスの果実
田中 英光
「文学界」1940(昭和15)年9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 75,277 字 · 147 页
二十
そんなとき、いちばん誰憚からず、あなたのことを想って、愉しいときを過しました。白昼、花々匂う小路をさまよい、勝手な空想にふけっていれば、あなたはいつもぼくの身近く、浄らかな童女のような相貌で、ぼくにつき纏っていたのです。
二十
宿舎の近くに、アイスクリイムスタンドがあって、そこに、十八歳になる、ナンシイという可愛い看板娘がおりました。
ぼくなぞは、夜間照明のベエスボオルなどを近所の子供達と見物した帰りに、スマックなぞ噛りに立寄るくらいでしたが、KOの柴山や上原などは、よくかよっていて行けばいつも顔を合せるほどでした。ことに美少年の上原などは、ナンシイ嬢と仲が良く、いつもスタンドに肘つきあっては話を交していました。
ある日の事、一緒に近所の床屋まできた柴山と肩をくんで、その店に入って行くと、上原がもう来ていて、娘さんとなにか笑い話をしています。ぼく達は隅っこでチョコレエトクリイムを貰い、二人でぼそぼそ嘗めているとき、入口のドアを荒々しく押して一人のアメリカの大学生が入ってきて、なにも註文せず、スタンドの前に立ち、腕を組んだまま、じっと上原とナンシイ嬢の様子をみつめていました。