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だいうちゅうえんせいたい

大宇宙遠征隊

海野 十三

「国民五年生」1941(昭和16)年4月号~(終号未詳)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 53,967 字 · 109 页

青空文庫

そして艇長の顔が、鴨居のところから、こっちをのぞいた。

「ああ、艇長。よく、お落ちになりませんでしたねえ」

と、三郎がため息をつくと、艇長は、仕切りの扉をぎしぎしならしながら、それを伝って下へおりながら、

「あはは。艇長が落ちたりして、どうするものか。ちゃんと棚の上に手をかけて、つかまっていたよ」

「でも、さっき大きい音がしましたねえ。艇長が落ちられたのにちがいないと思いました。すると、あの音は、何の音だったんでしょうか」

「ああ、あの音かい」

と、艇長は、下へおりて、ほこりの手をはらいながら、うしろをふりかえって、

「あの音は、そこに転がっている鞄だよ。棚から、すこしはみだしていたところへ、重力が加わったから、落ちたのさ。わしが落ちたら、あれくらいの音じゃすまないよ。わははは、まあとにかくわしも起きるとしよう」

艇長は、ゆうゆうと服を着かえだした。

「おい風間、お前は知らんだろうが、今日はこの噴行艇から、とてもめずらしいものが見えるぞ。宇宙旅行の、ほんとうの味は、今日はじめて出てくるといっていいのだ。おい、わしの話を聞いて、ちっとは悦べよ」

艇長は、けげんな顔の三郎をかるくからかった。