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だいうちゅうえんせいたい
大宇宙遠征隊
海野 十三
「国民五年生」1941(昭和16)年4月号~(終号未詳)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 53,967 字 · 109 页
昼と夜としかないのが月の世界であった。暁だの夕暮だのぼんやりと明るいときはない。
だから月の世界は、あれはてたように見える。やわらかさがない。死の世界である。けものもすんでいなければ、虫もとんでいない。花もなければ、木も生えていない。
「ああ、なんというさびしい月の世界であろう」
三郎は思わず、ため息をついた。
ただ心地よいのは、わが噴行艇が、光の尾をひいて、いさましくとんでいることであった。噴行艇は生きている。ま下の月の世界は死んでいるのだ!
三郎は、とうとう窓から、身体をひいた。あまり荒れはてた月の世界の光景をながく見ていると、気がへんになってくるのだった。
三郎が妙な顔をしていると、そこへ艇長がやってきて、触角をさしだした。
三郎も、こんどは心得て、触角をさし出した。艇長が何か話してくれるのであろう。
「どうだ。月の世界が、はっきり見えたろう。すさまじいところなので、びっくりしたろう」
三郎は、うなずいた。
「光っている陸地が見えたろう。『笑いの海』は、あの中にある。もうすぐ着陸だ」
「ああ艇長。『笑いの海』というと、月の世界に、海があるのですか」