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だいうちゅうえんせいたい

大宇宙遠征隊

海野 十三

「国民五年生」1941(昭和16)年4月号~(終号未詳)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 53,967 字 · 109 页

青空文庫

「ほんとうの海ではないよ。月には水がない。だから海どころか、小川も水たまりもない」

「じゃあ、いよいよへんですね、『笑いの海』だなんて……」

「それは、こうだよ。地球のうえから月を見ると、黒ずんだところがある。その黒ずんだところが、ちょうど海のように見えるので、それで『海』というのだ。『笑いの海』というのが、つまりは、岩でできた平原なんだ。降りてみれば、よくわかるがね」

「はあ、そうですか。『笑いの海』の『笑い』というのは、どんなことですか」

「それは地名だよ。伊勢湾の伊勢と同じことだよ。しかし一説に『笑いの海』の黒ずんだ形がなんとなく笑っている人間の横顔みたいだから、それで笑いの海というのだと説く人もある」

「へえ、笑っている人間の横顔ですって」

三郎は、また窓から、月の世界をのぞいた。

「ほら、あそこだ。一番高い山の左をごらん。まだ形がはっきりしないが、あの黒いところが『笑いの海』だ。笑っている人間の、鼻だの口だの頬だの、あたりが見えている」

「ああ、見えます、よく見えます」

三郎には、艇長のいったとおりの、月の面にはいっている笑いの顔の一部が見えた。

そういううちに、噴行艇は、月面に対していよいよ高度を下げてきたものと見え、光の帯のように見えていた太陽のあたる月面は、いつのまにやら幅が川のようにひろくなり、それ