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やまびこおとめ

山彦乙女

山本 周五郎

「夕刊朝日新聞」1951(昭和26)年6月18日~9月30日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 126,360 字 · 251 页

青空文庫

「規模としては単純なものだが、集まった人間が浪人たちだし、予備行動には相当の費用が使われている、その資金がどこから出ているか、それがはっきりわかっていない」

「しかし、丸橋某という男は、槍の大きな道場のあるじだったんじゃないのか、それにおれなどはまるで知らないが、紀伊家だか尾州侯だかが……」

「いやそんなものじゃない」

口まで持っていった、盃をそのまま、主馬は首を振って云った。

「丸橋はたいした浪費家で、むしろ生活の面倒までみて貰っていたらしい、紀州家の後援というのは、まったく事実無根だし、尾張家は一味が利用しようとしたものだ、というのは、尾張家初代の義直という人が、家光公とよくなかった、いろいろとまずいことがあって、幕府との折り合いもしっくりしない、寛永十四年に亡くなっているけれども、この関係はかなりひろく知られている、そこに正雪が眼をつけたんだ、そして行動を起こすばあいの、道具の二三に尾州家の印を付けたりしたんだが、むろん、その資金は……」

「――では、その資金は……」

「主謀者の正雪が自殺したから、徹底した真相はわからなかったようだ、けれども、私が調べていた記録の中に、その資金の提供者と思われるものが、偶然にみつかったんだ」