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やまびこおとめ

山彦乙女

山本 周五郎

「夕刊朝日新聞」1951(昭和26)年6月18日~9月30日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 126,360 字 · 251 页

青空文庫

二

そんなふうな、むやみなことを、番たび書いて来たようだ。正直のところ、半之助はうらやましかったし、嫉妬もしたが、それ以上に感動させられたものである。

それから約一年半ばかりして、しほは左のような手紙をよこして、他へ嫁にいってしまった。

――やむを得ない事情で結婚することになった、あなたが自分を愛して呉れるのなら、どうか自分の幸福を末ながく祈ってもらいたい、自分はたぶん、思いだすたびに、あなたのために、泣くことであろう。

主馬はその手紙を、半之助に読ませたとき、けむったいような表情をして、ゆっくりとこう云った。

――おれは今、自分が三銭くらいのねうちしかないような、こころもちだ。

遠藤千之助が、青山氏は捻ったようなことを云う、といったが、それはそのころから始まった癖であった。

二

充実した、意義ある、望ましい生き方をするには、どうしたらいいか。

五人のなかまのうち、これを、もっともしんけんに考えているのは、半之助よりも、むしろ青山主馬であったかもしれない。彼は決して正面からは、そのことを論じなかった。例の捻ったような、そらをつかうようなことを云うので、正木重兵衛や松室泰助などは、どうかすると、ふざけるな、といったふうな顔をした。