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やまびこおとめ
山彦乙女
山本 周五郎
「夕刊朝日新聞」1951(昭和26)年6月18日~9月30日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 126,360 字 · 251 页
二
半之助は黙って、微笑しながら見ていた。
「あたし来たでしょ」
近づきながら、花世は自慢そうに云って、ぱちぱちとまたたきをしながら、つぶらな眼でこちらを見た。
「待っていて下すった」
「このとおり」
半之助はこう答えながら、岩の食卓をさしてみせた。
二
花世は、よろしい、というように頷き、給仕は自分がする、と云って、さも心得がおに、飯や汁の、鍋の蓋を取り、出来ぐあいをしらべてから、それらを椀に盛った。……このあいだも、絶え間なしに、なにか云い続ける。付きまとう小鳥たちを叱ったり、追うかと思うと呼んだりする。
「だめ、そんなにおちびさんをいじめないの、お鍋へ落ちるわよ、るりさん、火傷したらどうするの、ちゃんと肩にとまって」
二人分の用意が出来ると、岩を中に、半之助と向きあって坐った。
「あたし御飯やお汁のよそいかた上手でしょ、さあめしあがれ」
そして半之助に給仕をし、自分も喰べながら、ぜんぜん突拍子もないようなことを、次から次と、話し続けるのであった。
花世がなにか話しているあいだは、半之助は自由にものを考えることができる。それというのが、彼女のおしゃべりは、自分の空想に自分で酔うのであって、相手がそれをどう思うかも、はたして聞いているかいないかも、まったく問題ではないらしいからであった。