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やまびこおとめ
山彦乙女
山本 周五郎
「夕刊朝日新聞」1951(昭和26)年6月18日~9月30日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 126,360 字 · 251 页
秋の章
一
「どうも、私の前兆の勘も、知れたもんですな、金二十枚どころか、せいぜい……」
秋の章
一
その年は、二百二十日の厄日の前後に、小さな暴風雨が二度あって、それからにわかに秋がきた。
半之助は、椹ヶ池の少し下の、蕨平というところに、小さな住居を建て、七月からそこで寝起きをしている。よそから入って来た彼に、そんなことが許されたのは、花世のおかげもあるが、また、四月の騒動のとき、彼がみどう一族のために、尽力したことも、役立ったのは慥かである。
崩壊する洞窟から、花世を援けて、辛くも脱出した彼は、清左衛門や、一郷のおもだった者たち(全部で五十余人に及んだ)が捕えられ、その検挙の指揮者が、村田平四郎であり、青山主馬もいることを知って、かれらを釈放するように、交渉した。
平四郎や主馬が、そんな処で、半之助に会ったことをどんなに驚いたかは、云うまでもないだろう。
半之助の交渉は成功した。検挙の目標は、登世と、彼女をとり巻く、柳沢系の者たちにあった。それは、かれらが江戸で策謀していたときから、予定されていたことであるし、十一日夜半の、武田八幡宮での、登世の言葉で、さらにはっきりした。