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やまびこおとめ

山彦乙女

山本 周五郎

「夕刊朝日新聞」1951(昭和26)年6月18日~9月30日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 126,360 字 · 251 页

青空文庫

「これではもうしようがない、雨でもあがったらやり直すとしよう」

そんなことを云うのが聞えた。

半之助は殆んど部屋から出なかった。夜もおそくまで、灯をかきたてて、読んだり、覚書をとったりしていた。

地図  二枚

見聞記 二冊

日記  三冊

「みどう清左衛門に関する調書」一冊

油紙の包の中にはこれだけあった。そのうち必要なのは、甘利郷の略図と、みどう家に関する調書であるが、初め披いてみるうち、まず眼をひかれたのは、黒い菱形を三つ集めた、家紋の写しであった。

――これだった。

半之助は殆んど声をあげそうになった。山村座の茶屋で見た、あの半の蒔絵の紋。丸茂の家の釘隠しの金具。どちらも同じであり、どこかで見覚えがあると思ったが、それは、十六歳のときに、この調書を見た記憶が残っていたのである。

――すると、この三つの関係はどうなるのだろう。

甘利郷のみどう家と、江戸で見たものとは、直接につながりをもっているのだろうか。さらにもう一つある。青山主馬の話によると、慶安事件に資金を提供した、不明の後援者の家紋も同一であったというが、それもここに関係があるのだろうか。

しかしこれらの疑問は、半之助の「かんば沢」