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やまびこおとめ
山彦乙女
山本 周五郎
「夕刊朝日新聞」1951(昭和26)年6月18日~9月30日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 126,360 字 · 251 页
に対する興味を、かくべつ強めるものではなかった。
なぜなら、叔父を狂気の如く惹きつけたのは、そういう政治的な秘密に属したものではない筈である。そのことは「調書」を読んでみても、はっきりとわかった。叔父が「みどう家」を探査にでかけたのは、初めは甲府城代の意志であったらしい。記録の冒頭の部分に、その報告のために書く、という意味が記されてある。そして、その書きだしのなかで、
甘利郷の土着民は、表に従順をよそおっているが、じつは極端に排他的で、よそから入って来る者には、決して宿を与えないし、野宿をするにしても、あらゆる隙を覘って、危害を加えようとする。
という記述がある。叔父は売薬商人にしていったのだが、どの家でも泊めようとしなかったし、ふいに物蔭から、石や棒切れを投げられたりした。要するに、探査は極めて困難であった、というのであるが、これはつまるところ、その探査に、「目的」のあることを示すのだが、記述はたちまち、その目的から離れて、異様な混乱と、意味の知れない、断片的なものにと、変ってゆくのであった。
だが、その調書からは、具体的なことは、ごく僅かしか把めなかった。