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やまびこおとめ
山彦乙女
山本 周五郎
「夕刊朝日新聞」1951(昭和26)年6月18日~9月30日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 126,360 字 · 251 页
二
と主馬が云った。
「裏から入りましょう」
二
二人は関屋の裏から入り、脇の廊下を、対問所の横の、杉戸口へと出た。
当時は関所の構えも厳重で、柵や木戸なども太い丸太で結いあげ、事があれば、充分ひと合戦できるように、造ってあった。また槍や、さすまた、袖搦み、などという道具のほかに、鉄炮が(関所の格によって数の差はあるが)並べてあり、これはその係りの者がいて、中の一挺だけはつねに弾丸を充填し、いつでも火繩がかけられるようになっていた。もちろん形式だけのことで、どこまで実行されていたかは疑わしい。それから、関所通行でもっとも厳しかったのは、よく知られているとおり、江戸から地方へ出る女性と、鉄炮とであった。特に後者は、それが鉄炮であること、を表示し、幕府老中の認証がなければ、親藩であっても重く罰せられた。
今そこでは、前に記した柳沢家の荷駄が、検問されていた。
此処は関屋のうしろが丘陵、前がすぐ桂川に沿った、崖の上の一筋道で要害としてはかなりな位置にある。与力一人、同心六人、小者十人、という定員のほかに、ものものしく身拵えをして、棒を持った足軽が十人いるが、これは主馬が八王子の「千人同心組」