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やまびこおとめ
山彦乙女
山本 周五郎
「夕刊朝日新聞」1951(昭和26)年6月18日~9月30日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 126,360 字 · 251 页
甲府城では、幾たびか探索を試みた。
土着民に特殊な勢力をもつような者は、そのころの政治としては放任できない。武田氏再興、などというばかげた俗信が、どんなはずみに、どんな騒ぎを起こすかも、しれないからである。だが、探索は成功しなかった。
みどう家そのものには、どう調べても不審なところはないし、住民たちからは、なに一つ、聞きだすことができなかった。ただその付近に二三の奇怪な伝説がある、甲冑武者の亡霊が、深夜に行列をする甘利谷とか。甲斐の国じゅうの狸が、年に一度集会をひらくという、狸の談合場とか。近づく者は生きて帰れないという、かんば沢とか。そばへ寄ると人でも獣でもひき込むという椹ヶ池。などである。
そのなかで「かんば沢」というのが、みどうの家となにか関係があるらしい。幾たびかの探索で、それだけは推測することができた。
そこで前後五回にわたって、かんば沢を調べようとした。現に三人そこへはいった者がある。しかし二人はそのまま行方不明になり、一人は辛うじて助け出されたが、白痴のようになっていて、まもなく狂死してしまった。
「その狂死したというのは、つい五年ばかりまえのことなんです」