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やまびこおとめ
山彦乙女
山本 周五郎
「夕刊朝日新聞」1951(昭和26)年6月18日~9月30日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 126,360 字 · 251 页
」
「――たしかに」権之丞は唾をのんだ、「御領内から、弓矢、猟銃を、お取上げになっていることは、事実でございます、また、たてがみを切るな、という御法令に反したかどで、そんなことのない馬までが、お城へもってゆかれる例も、少なくはないと聞きます、しかし、それがそのような企みのためだ、などとは、私にはとうてい信じられません」
「算法家は六七十年もさきの、日蝕を数えだすことができるそうです、けれどもそういう算術を知らぬ者は、その日その刻が来るまでは、決して信じはしないでしょう」
「それで比女さまは、そのような無謀な企てにお加わりなさる、おつもりでございますか」
「加わるのではない、登世が采配を振るのです、御再興の兵を挙げるとき、主将はみどう家に定っています」
「そして、もはや、それはぬきさしならぬところまで、……」
「あと五日、七夕会のときに」
登世はものに憑かれたような眼で、じっと空間を見あげた。
「七夕会のときに、どうあそばすのですか」
「この系図を持って、柳沢家の下屋敷へゆきます、そして、甲斐の古伝の猿楽をごらんにいれ、それをしおに吉保さまとじかにお会いして」
「比女さま……」