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りょうきのはて
猟奇の果
江戸川 乱歩
前篇 猟奇の果、後篇 白蝙蝠「文藝倶楽部」博文館、1930(昭和5)年1月~12月<br>「猟奇の果」もうひとつの結末「猟奇の果」日正書房、1946(昭和21)年12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 134,971 字 · 270 页
警部が変な顔をして聞き返した。傍に聞いていた明智小五郎も、この異様な話に興味を覚えたのか、品川四郎の顔を穴のあく程見つめている。
「イヤ、御分りがないのは御尤もです。私だって、最初は自分の頭がどうかしたのかと疑った程です。併し、私はもう半年もの間、その、私と寸分違わない怪物の為に悩まされているのです。私だけではありません。今申上げた青木君もこのことはよく知っているのです。実を云いますと、もう長い間、私は、こんなことが起りゃしないか、起りゃしないかと、ビクビクものでいました。その私と同じ顔の男が、ひどい悪党であることがよく分っているものですから。今度の事件だって、そいつの深い企らみです。殺されたのは私の友人の細君、イヤ細君ばかりじゃない、青木君自身だって、今頃は生きているか死んでいるか分ったものではありません。両人共私と関係の深い人です。その下手人が私と寸分違わない男だとすると、どういう事になりましょう。さしずめ疑われるのはこの私です。ね、この私です。私はそれが恐ろしいのです。で、よく事情をお話して、悪人の先を越して、私自身はこの事件に何の関係もないということを、ハッキリ申上げて置く為に、急いで伺った様な訳なのです」