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りょうきのはて

猟奇の果

江戸川 乱歩

前篇 猟奇の果、後篇 白蝙蝠「文藝倶楽部」博文館、1930(昭和5)年1月~12月<br>「猟奇の果」もうひとつの結末「猟奇の果」日正書房、1946(昭和21)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 134,971 字 · 270 页

青空文庫

波越警部は少からずテレた形で、

「ただ、念の為に一寸御尋ねしたまでです」

と苦しい云い訳をしたが、内心では、

「家に同居している社員などの証言では、どうも少し」

と半信半疑であった。

それから暫らく雑談を交わしたあとで、警部は編輯所を辞して、東亜ビルの玄関を出た。「この足で品川の留守宅を訪ねて、傭人を検べて見るかな」と考えながら、半町も歩いた時、突然うしろから呼びかけるものがあった。

振向くと、さっきの山田という社員が、追駈けて来たのだ。そして、

「御一緒に警視庁へ参りましょう」と、変なことを云う。

「エ、警視庁に何か御用がおありですか」

「ハア、その高名者番附とかを一度拝見したいと思いましてね」

波越氏はハッとして、相手の横顔を凝視した。

「君は誰です」

「分りませんか」

人通りの少い横丁へ曲ると、山田社員は、眼鏡をはずし、ふくみ綿をはき出し、チョビ髭を払い落し頭の毛をモジャモジャとやった。

「アア、明智君」

波越警部は、びっくりして叫んだ。

顔料はまだそのままだが、顔の形は明智小五郎に相違ない。彼は警部の驚き顔を無視して話し始める。

「さっきの僕の証言は嘘じゃない。