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りょうきのはて

猟奇の果

江戸川 乱歩

前篇 猟奇の果、後篇 白蝙蝠「文藝倶楽部」博文館、1930(昭和5)年1月~12月<br>「猟奇の果」もうひとつの結末「猟奇の果」日正書房、1946(昭和21)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 134,971 字 · 270 页

青空文庫

「オイオイ、お前方は何者だ。無闇に這入って来てはいかん。大切な仕事の邪魔になるのを知らんか」

「イヤ、大川博士、邪魔をしに来たのではありません。私達は先生の驚くべき御事業を、参観に参った者です。御高説を拝聴に参ったものです」

明智が鞠躬如として云った。

「ウン、左様か。それならば別段叱りはせぬが、お前達はわしの学説を聞きに来たというが、多少でも医学を心得ておるのか」

「イヤ、医学者ではありません。この方々は警視庁のお役人です。つまり役目柄、先生の御発明がどんなものであるかを、一応伺って置きたいと申しますので」

「アア、役人か。役人がわしの仕事を見に来るのは当り前だ。なぜやって来ぬかと、不思議に思っていた位だ。よろしい。素人にも一通り分る様に説明して上げよう」

実に変てこな問答である。一同何の事か少しも分らないで、目をパチパチやっていたが、明智が小声で説明するのを聞いてやっと仔細が分った。

大川博士と云えば、十年程以前までは、大学教授として、世にも聞えた人であったが、教職を辞して、一種奇妙な研究に没頭しているという噂が伝わったまま、世間から忘れられてしまった。