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りょうきのはて

猟奇の果

江戸川 乱歩

前篇 猟奇の果、後篇 白蝙蝠「文藝倶楽部」博文館、1930(昭和5)年1月~12月<br>「猟奇の果」もうひとつの結末「猟奇の果」日正書房、1946(昭和21)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 134,971 字 · 270 页

青空文庫

どこで何をしているのか、誰も知るものはなかった。

彼の研究は、人間の容貌を随意に変える方法つまり「人間改造術」とも称すべきもので、医学と美容術を混ぜ合わせた一種異様の題目であったが、この気違いめいた仕事を、気味悪がって、顧みる者もなかった時、ふと博士と知合い、その手腕を信じ、博士を助けて「人間改造術」を完成せしめ、大芝居をうって見ようと、途方もない考えを起した男があった。

彼は窮乏のどん底にあった博士に、生活費と研究費を供給した。十年に近い年月、うまずたゆまずそれを続けた。

一年程以前、大川博士のこの奇怪なる研究は、幸か不幸か見事に完成した。ある人間を全く違った人間に作り変えること、又、ある人間と寸分違わぬ人間を作り出すこと、凡て自由自在である。

だが、研究の完成と同時に、精根を使い果したのか、或は悪魔の仕事が神の怒りにふれたのか、大川博士は気が違ってしまった。彼は狂人なのだ。併し、気違いながらも、不思議なことに、人間改造の施術は忘れぬ。完成した大発明を、黙々として実行する、一種の機械となり終った。

博士に資金を供給した男にとって、この博士の発狂は、却って仕合せであった。